砂の上のダンス

dancing on the beach

満月の月明かりを照明に、砂浜の上で踊るという、とても素敵な経験をさせてもらいました。

砂浜をステージに、漆黒の海がバックグラウンドという洒落た舞台空間、

そしてただの満月じゃありません、2012年のスーパームーンの夜!

フルム-ン・パフォーマンス contemporary dance mayumi inouye and made putra wijaya at amanusa private beach on full moon 2012 満月に砂浜で踊る
プライベート・ビーチでのフルムーン・パフォーマンス

広い砂浜には ウンブル・ウンブル と呼ばれる幟群が風にナビきながら立つという、とてもシンプルな装飾が施されただけ。

ステージを照らすライトを除くと、ゲストの足元を照らすためのロウソクと、月明かりだけです。

パッとみて、モノクロームと錯覚するような風景が会場として準備されており、足を踏み入れた瞬間、「きゃー、ここで踊ってイイの?」と感激しました。

金銀や原色で華やかなバリ舞踊のステージとは大きく雰囲気が異なり、モノクロの空間に原色のガムランが置いてあるのがなにかしら不思議に思え、異国っぽい場所になっていました。

バリのホテルのプライベート・ビーチは、5つ星ホテルであっても、たいてい隣のホテルのビーチと繋がっているんですが、ここは途切れた入江なのか、ちょっと隔離されてる感じ。

なんとなく離島を思わせるんです。

スタッフと出演者以外は誰も居ない、これから秘密集会でも開かれるみたいな、なんだか、ぞわぞわ~っと鳥肌が立つぐらい、かっこいい雰囲気。

すごい!すごい!こういうの好き!!!と、ハイテンションになる、おのぼりさん状態の私。

フルム-ン・パフォーマンス contemporary dance mayumi inouye and made putra wijaya at amanusa private beach on full moon 2012 満月に砂浜で踊る
足元を照らすロウソクの灯りが砂浜に点々と散らばるだけの広くて贅沢な空間!

今回の砂の上の公演、小規模編成ガムランでバリ舞踊+ちょっぴりコンテンポラリー風という趣旨のスタイルですが、去年の大みそかに、今回のグループの別の公演を見た方が、「月(moon)」をテーマに砂浜でパフォーマンスをしてくれないか?と依頼をされたそうで、踊り手として、また お声がかかりました。

あ~り~が~た~や~!!! 嬉しくって、拝みまくりです。

フルム-ン・パフォーマンス contemporary dance mayumi inouye and made putra wijaya at amanusa private beach on full moon 2012 満月に砂浜で踊る
基本はバリ舞踊の型。

今回の私の踊りのパートナーになってもらったのは、Gong Sang-LAH-SUN というグループでも手伝ってもらっている、男性バリ芸能家のマデ・プトラ・ウィジャヤさん。

昨年のバリ芸術大学の卒業制作で最優秀の成績をもらった新進気鋭の舞踊家です。

海の波音に負けるのが判っていたので、今回はピアノ演奏は無し。そこで前に踊った「ヌラヤン」でなく、ガムランのみを使う別の曲が用意されました。

舞踊曲も特に題名は無く「プトゥリ」とだけグループでは呼んでいましたが、繰り返しの多いゆったりとしたテンポと、激しいバテル部分がある古典っぽい雰囲気を持つ曲でした。

月にちなんで、舞踊のタイトルは「Dewi Ratih – Dewi Bulan」ラティ女神と夫のスマラ神のストーリーです。

フルム-ン・パフォーマンス contemporary dance mayumi inouye and made putra wijaya at amanusa private beach on full moon 2012 満月に砂浜で踊る
そう!またまたコンテンポラリーだからね、エビ反ったり、回転したりしなきゃ!

砂浜で踊るなんて、パートナーも私も、もちろん経験がありません。

あらかじめ「風があるだろう」「砂に足を取られるだろう」という想像をして一緒に踊りを作りましたが、実際に砂浜に足を乗せてみると、思ったように動けない。

ビーチバレーって、なんで、あんな激しい運動できるのでしょうか? 砂の質が違うのかな・・・

音楽に合わせてダッシュで走ろうとしても、足が埋まって前に進めません。

恐怖映画で、地面から手が伸びて、足を捕まれちゃう感覚がこんなの???

また、思ったよりも風が強く、衣装が足や手にまとわりつき、さらに走りにくいのです。

しかし、パートナーは、さすが男性だけに体力がある!

「軽やかに」回転したり、「軽快に」走り回ったり、重たくて動けない私をフォローしてくれるかのように、クルクル踊ってくれます。ああ、助かった。

コンテンポラリーは1回だけニョマン・スラ氏の作品で踊った事があるというマデさんですが、その場で即興的にパパッと踊りをキメてくれて、感謝。

そいうえば、着替えている時、腰布のサロンを親父巻き(輪にして折るタイプ)にするよう私に指示したのもマデさん。足を広げられるように、という事でしたが、もし、普通のバリ舞踊みたいに巻いていたら、私、きっとつまづいて、砂の中に突進していたと思います。

こういう勘の鋭さは、プロの皆さん、やはり、私なんかとは持ってるものが、全然違いますね・・・

フルム-ン・パフォーマンス contemporary dance mayumi inouye and made putra wijaya at amanusa private beach on full moon 2012 満月に砂浜で踊る
バリ暦で10番目の満月でもある夜。海面が月光に照らされ、淡く輝いていました。

衣装の色に関しては、ちび太の勘がバッチリでした。(自分で褒めとこ)

ウンブル・ウンブル&衣装のスレンダン帯の白、ラティの衣装&月の黄色

スマラの黒の衣装&海の黒。現地で「おお!」っと驚きました。

でも、もっと驚いた事。

「月、黄色でなくて白だぞ」というパートナーの御言葉。

白い・・・確かに、青白い・・・お月様って黄色いクレヨンで塗って育った気がするけど、

空にに浮かんでいる満月は、白にしか見えません。

内陸のウブドで見る月は、薄い黄色なので、海岸だと色が違って見えるんでしょうか?

このスーパームーンの夜は白でしたが、ヴィーナストランジットの頃も同じ場所で踊らせて頂いたら赤でした。自然って美しい。

フルム-ン・パフォーマンス contemporary dance mayumi inouye and made putra wijaya at amanusa private beach on full moon 2012 満月に砂浜で踊る
月にちなんで、スマラ(奥)とラティー(手前)

写真では見えにくいですが、広い砂浜には、隅々まで模様が描かれているんです・・・鳥取砂丘の風紋みたいな、きれいな波模様が、ステージだけでなく客席にまでつけられていました。

そこへ、踊りながら足を踏み入れていく快感!

いっひっひ~! 楽し~い!

舞踊は、我々の用意したスマラとラティ物語のみなので、気兼ねなく舞台の砂を蹴散らすことができました。

ひゃっひゃっひゃ~!

今回、ホスピタリティが最高といわれている有名なラグジュアリー・リゾートが、特別なゲストのために用意した少人数パーティーでしたが、主催者のこだわりというか、美観というか、ホストとしての準備が、すっごくきめ細かかったです。

砂の模様だけでなく、ゲストが到着するまで海岸で焚かれていた松明にも、香木を混ぜてあったようで、燃える樹の香りと、森林みたいな香木の芳香が、本物の潮の香りに混じって、大自然を感じさせるような趣向がこらしてありました。おっしゃれ~!

さらに、偶然この日は、ビーチ入り口の寺院が寺院祭オダランでもあり、別のガムラン楽団のググンタンガン演奏が、風の向きで時々ステージの方にも流れて来ます。

かっこええええええええ!

私自身はゲストではなく、舞台でもてなす側の立場なのに、こういう演出にドキドキしました。

帰りの車の中でも夢見心地でボーッとしてた。

帰宅後もボーッ。翌日も余韻持ち越し・・・なんて素晴らしい。

こういう貴重な体験をさせてもらう度に思うんですが、バリの芸能の神様に感謝!

サイトを読んでもらうとおわかりでしょうが、ゴージャスって単語が似合わないちび太。

そんな貧相感漂う私が、世界有数のラグジュアリー・リゾーツで、独演ですよ~!

あ、デュエットでした、すみません・・・

人生、何が起こるか判らないですね。

ゴージャスって言葉、色々なニュアンスがありますよね…

「妹と歩いてたら、叶姉妹みたいって言われたの」と自慢げに話す在バリ日本人の言葉を聞いたとき「え゛? 私だったら、うちの妹と街を歩いてる時に、叶姉妹みたいって言われたら『ケンカ売ってんのかコラ!ふざけんな!』って思うけど…この人は嬉しいの?ギャグで言ってるの?」と感じてしまった私。

こういう種類の「ゴージャス」は、NO。

今回の体験で感じたゴージャスは、何て表現したらいいんでしょうか

贅沢??

これが本物の大人の世界なんだわ~、という感想でした。

…あ、年齢的には充分大人を超えている筈なんですが…