キヨッさんに初めて出会ったのは、私が初めてPKBに参加させてもらった2003年の事であった。
着替えの控室に芦屋雁之助の「山下清 画伯」を彷彿とさせるオッサンが、ヌーッと現れた。かと思うと、いきなりその場にいたD女史にスゴイ勢いで怒鳴られて追い出されたのである。
何だ?何が起こったの?と思っていたら「あの人は毎年PKBにやって来ては出演者用の御飯をかっぱらっていく、ちょっと迷惑な人なの」とのD女史談。彼女はアートセンターに勤務しているので、情報は確実である。
バリ舞の世界では、キヨシの愛称で親しまれる(?)おじさん。
PKBで午前中の公演に出るので、朝5時にリハーサルに行った人が「キヨシが練習を見に来ていた」と言っていた。どうもPKB期間中、彼はアートセンター内に寝泊まりしているらしい。深夜1時過ぎの会場で、私も会ったことがある。
PKB中に公演を観に行くと、たいてい彼はやって来る。開演ギリギリに登場しては、堂々と舞台を横切って、客席の最前列(椅子よりも前の床、あるいは思いっきり舞台の上)、ど真ん中の特等席を確保するのだ。もちろん名物おじさんだから、誰も注意なんかしない。
しかし!!!
踊り子仲間の情報によると、「キヨシが現れる公演は、必ず良い公演なのだ。」という事で、私、大喜び!
初回以降、毎年PKBに参加させてもらっているのだが、もれなくキヨッさんが現れるのだ。今のとこ、参加した公演全部観に来てくれてるぢゃんか!!!
・・・そして、御飯をチャッカリ頂いていらっしゃる。
ありがたや!ありがたや!
ちょっと変わったおじさんの雰囲気で、周囲に有無を言わせぬ空気を醸し出すキヨッさんなのだが、普段は、どうも普通の人らしい。
軽トラを運転している姿を見たという人がいる。 デンパサール近くの道で、私も見かけたことがある。ベモ待ちをしているその姿は、片足を樹にかけて、とてもダンディであった。(バイクで走ってて目に入るだけでもスゴイ存在感だが・・・)
とにもかくにも、芸能好きのキヨッさん!PKBやアートセンターのパンフレットにまでそのお姿が載ってるほど(公演の写真内で、客として舞台カブリツキに座っているため)
PKBの際は、リハーサルをチェックし、踊り子の控室をくまなく巡回しては、今夜はどの公演を観るか、自分なりのルールで決めているらしいので、バリ文化庁の職員なんかより、ゼ~ンゼン芸能に対する目が肥えてます!PKBで、その日一番の公演を見たかったら、彼の姿を探せば間違いないですぜ~!
注:タイトルは、バリ芸能界に問題提起をしてくれた有名コラム「バリ芸能通を自負する前に(バリが好きであればこそ)」の著者N部氏にパクリ許可を受けてます。現在コラムはネット上から削除されていますが、書かれていた「チャーター小判ザメ」は今も後をたちません。バリ芸能を学ぶ&見る方々に今一度考え直してもらう為にも、再掲載を願っています。