ガールズ・ガムラン・グループ

演奏の映像を頂きました!別記事でご覧ください

ガールズ・ガムラン・グループ
ガールズ・ガムラン・グループ トゥナス・マラガウィ楽団
photo by Teguh

トゥナス・マラガウィ舞踊団は、プリアタン村のバンジャール・カラー地区にある、バリ伝統舞踊を学ぶサンガル(サークル・教室)で、この3年、 f (カデ・フェリー) と m (真由美) が二人で指導をしてきました。
当初は小学生だけの所属であったサンガルも、時を経た今では、その小学生が中学生に進学し、新たな生徒も参加して既に幼稚園、小中学生混合のサンガルとなっています。

全ての子供達はバリ舞踊を習っており、その中の何割かは、既に公演などで踊り始めている踊り子グループのトゥナス・マラガウィですが、今年、我々は、バリ舞踊とは切り離せない伝統楽器の「ガムラン」楽器の演奏を教える試みを行ってみました。

まずひとつめの目的は、踊りを踊るときに、太鼓の音、銅鑼の音、テンポを刻むカジャール(打楽器)の音などのガムラン楽器の音をしっかりと聞き分けて、音楽に合わせて踊られるように、というもの。
これまでの踊りの練習で、いつも m が怒りながら直していたのが、音楽を聴いて、体で感じて踊れということ。
銅鑼の音をひとつの周期として、次の動きにすすむ
カジャールのテンポに合わせて、足を動かして歩く
太鼓の出す合図で、動きを変える
それらは、バリ舞踊にとって、とても大切なことなのに、一旦振り付けを覚えてしまうと、音楽を無視して、自分のタイミングで踊ってしまう子が多すぎたのです。
もちろん、耳が良い踊り子も数名いますが、残念なことに、大多数が音楽と合っていません。

ガールズ・ガムラン・グループ

トゥナス・マラガウィ楽団 ガムラン練習風景

ふたつめは、仲間と「協力」するということを、学んでもらうため。
バリではゴトンロヨンとと呼ばれる相互扶助が欠かせません。バリ舞踊は、群舞を除くと、ソロで踊る場合などは、個人で突出していれば、それが褒められる風潮があるのですが、ガムラン楽器に関しては、技術力の差がある場合、メンバー全員が協力して、心が揃っていないと、きれいな音が出せません。皆が同じ目的を持って、協力しあうことを学んで欲しかったのです。

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トゥナス・マラガウィ楽団 ガムラン奉納演奏
photo by Teguh

fm は、「女の子でもガムランを演奏できるのであろうか?」と、長い時間ふたりで話あいました。(時々ケンカしながら・・・)

バンジャール・カラーの男の子をみると、かなり小さい頃から演奏の真似事をしたり、バロンの行列の演奏をしたり、(Ngerawan)
バラガンジュールに参加したりしており、また、芸術家の祖父や父を持つ子も多く、演奏の資質がある子が目立ちます。
練習をつければ、ガムラン演奏については心配せずとも可能で、子供だから演奏が難しいという事はない感じ。

また、最近はバリ芸術祭(PKB)でも、婦人楽団による演奏の競技会も毎年あり、各県代表の婦人楽団が、その技術を競っていて、女性の演奏は可能なことです。
なによりも、ガムランを演奏する少女達の公演を、実際にその芸術祭会場で見たことがあり(ヌサ・プニダ島からの参加だったと思う)
あまり見かけないというだけで、女の子達でも、練習すれば演奏できるのではないだろうか?と、最終的にはまとまりました。

プリアタン村には少女によるガムラン楽団は未だありません。
村のほとんどの少女は、演奏するよりも、踊る方に興味を持っているのだと思われます、それほど踊る環境が豊富な地域なのです。
fm がトゥナス・マラガウィで演奏を教え始めた頃も「難しい!踊りの方が簡単!」と、子供達はよく愚痴っていました。

ガールズ・ガムラン・グループ

トゥナス・マラガウィ楽団 ガムラン練習風景

2014年の1月から開始したガムランの練習、最初の二ヶ月は、バチの持ち方や、叩いた鍵盤の音の止め方に慣れず、それにかなり苦労していました。
それでも二ヶ月経過して、練習曲の中で苦戦しているコテカンと呼ばれる奏法が「あれ?」と、突然出来るようになってくると、、、、
そうなったら、楽しくなって来たようで、練習日でなくても、時々バンジャールの集会場の楽器小屋から、そのコテカンがきちんと嵌るように、学校帰りに友達と練習している音が聞こえてきていました。

fm が用意した演奏曲は、どれもスマル・プグリンガン楽器で演奏される有名な曲。バンジャール・カラー地区の所有する楽器はゴン・クビャールに属すのですが、我々は、スマル・プグリンガン楽器向けに作られた古典曲の甘くて柔らかい感じが、少女達の手による演奏にはピッタリなのではないかと感じて、そればかり練習をさせていました。

四ヶ月の練習のあと、バンジャールの寺院の寺院祭オダランの場で、初めての演奏が試されました。
寺院祭でいつも踊っていたトゥナス・マラガウィ舞踊団は、今回トゥナス・マラガウィ楽団に姿を変えて、数曲のスマル・プグリンガン向けの曲と、なんと、舞踊プペンデタンの伴奏までこなしたのです。

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トゥナス・マラガウィ楽団 ガムラン奉納演奏
photo by Teguh

女の子達が演奏をして、そのお母さんや、御婆ちゃんが、線香やお供え物を手に、プペンデタンという神聖な奉納舞踊を踊りました。

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トゥナス・マラガウィ楽団 ガムラン奉納演奏 プペンデタン舞踊の伴奏
photo by Teguh

たまたま、この週の頭に、バンジャール・カラー地区の婦人会が、プペンデタンのコンテストを行っていたため(Lomba Pependetan
この時は、毎回奉納を行う踊り手以外に、コンテスト参加者も奉納を行い、なんと、少女達は4回も繰り返しプペンデタンの演奏を行いました。

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トゥナス・マラガウィ楽団 ガムラン奉納演奏 プペンデタン舞踊の伴奏
photo by Teguh

寺院祭が終わると、またトゥナス・マラガウィは舞踊団として、通常の舞踊の練習に戻りますが、時々はガムランも演奏法を忘れないように練習を続けたいと思います。叩いて踊れる芸術家に育つような子が出てくるといいですよね!!

この寺院祭での経験と、ガムラン演奏という他のメンバーとの協力が欠かせない楽器練習をやった経験とが、今後の少女達にとって思い出だけでなく、何か形になってくれると良いです。(これからの舞踊練習で、ちゃんと楽器の音が聞き分けられるでしょうか?)

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トゥナス・マラガウィ楽団メンバー(小2から中2までの総勢20名)
演奏ヘルパーと地域の役員と記念撮影 photo by Teguh

がんばれ、トゥナス・マラガウィ!