「アンクルン」ああ、聞いたことある!という方も多いかと思います。 ただ、バリ島では「アンクルン・バンブー」と言わないと話がズレることがあります。 バリ島では「アンクルン」というと、重要な宗教儀式で使われる、金属製の楽器なのです。 さて、ここでは「アンクルン・バンブー」 この楽器は、東ジャワでポピュラーな民族楽器で、子供から大人まで好んで演奏をします。 その竹の奏でる音色は、インドネシア人のみでなく、外国人をひきつけるものがあるようで、数多くの外国人もその技術を学び、演奏しています。 東ジャワの民族楽器 竹のアンクルン この竹製の「アンクルン・バンブー」楽器、本来は東ジャワの民族楽器ですが、ここバリ島内でも目にすることが出来ます。 多くの芸術家が、このジャワ島の竹楽器アンクルンと、バリ島の民族音楽楽器をコラボレーションさせ、新しいジャンルの曲を作ったりしています。 (kadek ferry) が演奏を行っている「ティルタ・サリ楽団」と「グンタ・ブアナ・サリ楽団」も例外ではありません。 数年前に、この竹楽器アンクルンと自分達のガムラン楽器を使って演奏を行いました。 ティルタ・サリ楽団のアンクルン演奏 2007年PKBバリ芸術祭オープニング・パレード練習風景 この竹楽器アンクルンと、バリのガムランを一緒に演奏するという試みは1960年代には既に行われており、イギリスのBBCテレビが1969年に作成したバリ音楽についての番組(デイビッド・アッテンボロー・プロデュース)で、ある楽団(サヤン村から来たと思われるグループ)が、 プリアタン村で竹アンクルンとガムラン・アンクルンを演奏する姿が撮影されています。 竹楽器アンクルン芸術は、いまもなお様々な変化を遂げながら演奏されています。 楽団によって演奏されるだけでなく、ここプリアタン村では、いくつかの学校が、この楽器セットを所有しています。 自分達の国の伝統楽器を、このセットで学べるのです。素晴らしいですね。 も、この竹アンクルン楽器に惹かれたひとりです。 そして、ここf studioの近くにある、幼稚園(プレイスクール)で、自分が音楽を教えている園児達に是非アンクルンを知ってもらいたいな・・・と思いつきました。 の友人を通じて、ウブドのパダン・トゥガル地区に住むイ・ニョマン・アルタナ氏を訪れました。 アルタナ氏は、ティンクリックというバリの竹楽器や、スリン・ガムランという竹笛、そして今回の記事で紹介する「竹アンクルン」を作る職人です。 竹アンクルンに関しては、かなりの数を地域の学校のために作ったそうです。 が以前プリアタン村の楽団で演奏したことのある竹アンクルンも、話を聞いたら、アルタナ氏の手によるものでした。 アルタナ氏 は幼稚園のために、2セットの竹アンクルンを依頼しました。 また、アルタナ氏の協力によって、その製作工程を写真に残すことを許されました。 ありがとうございます。 【1】 材料選別 竹アンクルンには、日本でも見る白い竹と、黒が混じった竹の2種類が使われます。 今回、アルタナ氏は黒い竹の方を選びました。 白い竹と黒い竹の間に、それほどの音色の違いは無いそうですが、長期に渡って使ってもらいたいので、丈夫な黒い方が良いとのこと。 虫がつきにくいそうです。 この黒い竹は、ジャワ島産のもので、アルタナ氏はギアニャールのブレガ地区に住む友人から譲ってもらい用意してくれました。 竹楽器 アンクルン・バリ 【2】 音響筒つくり(音色を荒く調整) 音程を決めるのに、これまでの経験から作ったという定規状のものを使って印をつけていきます。 竹の大きさなどによって、音のセットが違うそうで、アルタナ氏は、幼稚園の子供でも握って演奏しやすいようにと短めの長さを基準にしたものを作ります。 特性の定規以外に、キーボードも使って、念入りに基準の音がチェックされますが、 あらかじめ大雑把にカットした長さのものが、キーボードの音でもピッタリでした。さすが。 長年の経験とカンが生かされています。 竹楽器 アンクルン・バリの制作過程 【3】 土台つくり 音程が決まったら、こんどはそれらを載せる台を作ります。 アンクルンは台の上に少し浮くように載せて、振って揺らし、音を奏でます。 どの程度浮かせるかも、長年のカン。 自分で作成した特殊な工具を使って、ものすごい速さで竹に穴が開けられ、またカーブが削られていきます。 竹楽器 アンクルン・バリの制作過程 【4】 枠つくり 竹アンクルンを置く、台を作ります。 竹楽器 アンクルン・バリの制作過程 【4】 組み立て 全てのパーツが組み立てられ、接合部は切り口で怪我をしないよう、ラタンを使って巻かれます。 ラタンを巻き終えたら、竹の保護のために薄く塗装を施します。 竹楽器 アンクルン・バリの制作過程 さあ!鳴らしてみよう!柔らかい竹の音色が美しく響きます。 竹楽器 アンクルン・バリ 完成品の音をチェック 「ザ・スプリング・ウブドの園児、竹アンクルン楽器を弾いてみる」 スプリングの園児達にインドネシアの文化を紹介する授業で、は、何回か インドネシアやバリ島の民族楽器を持参して園児達に触れてもらった。 テクテカン芸能で使われる竹のクルクル、バリ島の竹笛スリン、スマトラ島のルバナと呼ばれる太鼓など、友人の助けを借りて準備し、園児達に触れてもらってきました。 そして今回、この西ジャワ島スンダ地方の竹アンクルンに園児が挑戦しました。 ザ・スプリング・スクール・ウブドでの練習風景 8個の音響筒(ドレミファソラシの7音階)でワンセットとなるこのディアトニック音階の竹楽器を使って、 スプリングの園児達は、これまで授業で習ったインドネシアの童謡や、西洋の音楽を演奏することができました。 ザ・スプリング・スクール・ウブドでの練習風景 さらに、7音階の中から、ペンタトニックと呼ばれるバリの五音音階だけ使って、バリ島のドラナンという子供達の唄遊びや ジャワの古い曲も演奏することができました。 みな、とてもうれしそうに揺り動かしながら音をだしていました。 イ・ニョマン・アルタナ I Nyoman Artana I Nyoman Artana イ・ニョマン・アルタナ Jro Mangku I Nyoman Artana,A.Ma. Pd 1947年7月生まれ。ウブドのパダン・トゥガル出身。 ティンクリック、スリン、アンクルンといった竹の楽器を作る職人であり、小学校(マス村小学校)の音楽教師でもある。 これまでに、複数の子供のための曲も作曲しており、「ググル・クスマ・バンサ」という曲は、インドネシア独立の勇士達を讃えた歌として、2年前のバリ州の退役軍人の記念日の際に披露された。 音楽教師の顔のほかにも「ウンダギ」と呼ばれる、バリ伝統の建築デザイン技術者としての顔も持つ。 ウンダギは、バリ伝統の建築についての知識のみでなく、宗教に関しても造詣が深い必要がある専門職である。