インドネシア語のわかる方なら、ゾッとしますよね? ↑↑↑
意訳すれば「今度のチャロナランでは本物の死体を使います」ですがな。
私は最近まで、ずっと、奉納劇チャロナランの時には寺の神様の希望があれば、墓から死体を掘り起こしてきて劇中で使う怖いバージョンのチャロナランの場合もあるんだ。と思っていました。チャロナランは、たいてい「死の寺院=プラ・ダレム」での奉納なので、おどろおどろしいランダが神様だから、本物を所望される場合が多いんだと思ってました。
過去のバリ舞踊図鑑にも、その旨書いた事があるかもしれませんし、友達との会話の中でも言った事があると思います。誰かが「マヤット・アスリを使う」と教えてくれるたびに、そんなバチあたりな・・・と思ってはいたのですが、
ごめんなさい!本当に思いっきり勘違いでした!
客が建物の外まで溢れるほど大人気の奉納チャロナラン。この辺の席だと音しか聞こえない。
(2008年から2010年の流行トントナン)
今年(2008年)シシアン役としてチャロナランで踊った時のことです。舞台裏には竹組みの足つき担架みたいな物が置かれておりました。それを指さして、知ったかぶりの私が「今夜は本物の死体(マヤット・アスリ)なの?」と近くの人に尋ねると「うん、そうらしい」と教えてくれました。うへ~、今夜はエグい方のチャロナランか・・・と、勝手な納得。
物語は開始され、ドキドキの自分の出番も終わり、ホッとして舞台裏に戻って着替えかけたら
「シシアンの皆さん、着替えずにそのまま待ってください。この後、深夜0時きっかりに、死体の周囲で踊ってもらいますからね~。」の指示!
聞いてません、そんなの我々は一回も練習もしてません。
シシアン一同、「シ~ン・ビソォ!(出来んわい!)」の大騒ぎです。
「とりあえず、音楽にあわせて飛んだり跳ねたり、死体を覗き込んだりして、キーキー悲鳴をあげてください。アンセル(合図の音楽)の時に死体の周囲を左回りに走ってくれればチュクップ(充分)です。」
チュクップぢゃないです。いきなりアドリブは効かないです!!ってブツブツ言っても始まらない。「は~い、0時です。照明が暗くなるから、すぐ舞台に出てくださいね~」で、我々は舞台へ飛び出しました。
化け物の化粧は美人のイメージが崩れる!と、写真御法度の踊り子もいますが
髪型だけでも憧れのシナロケのシーナさんに一歩近づけたようで感涙!の博多出身mayumi
舞台上には竹組み担架の上に、死体が横たわっているのが見えます。この時のシシアン・ングレーは白い布を頭巾代わりに被って顔を覆う状態なので、ほぼ自分の足元しか見えませんが、「死体を覗き込め」と指示されていたので、怖いもの見たさも少しあり、死体に近寄ってみます。
臭いものかと思ったけど、何も匂いません。度胸の付いた私、二回目に近づいた時はもう少し死体を観察してみます。
このお爺さん、土気色だけど皮膚にハリがあってキレいだから、死後まだ数日?・・・とか思った、その時
「がlskんfが;うぇおkんbm・あksjがs」
もうちょっとで、演技ではない本物の悲鳴をあげるところだった。
死体の足が動いたんです~~~~~!
何で他のシシアンの皆さんは、平気なの?
ていうか、掘ってきたのに、泥まみれじゃないのは、清潔すぎ??
もしや、生きてる???
・・・そうなんです。生きてるんです。
チャロナランでいう所の「マヤット・アスリ」とは、生きた人間が「マヤット」の役をする。
という意味だったそうなんです。いや~、お恥ずかしい。
バリ人は、私に説明をしてくれる時には、判り易いように「マヤット・アスリ」と、インドネシア語を使ってくれますが、バリ語では「バンケイ・マター」と言ってるんですな。
訳すると「新鮮な死体、生の死体」だって。
生きてるんだから、そりゃ新鮮ですわ。ナマモノですわ。
チャロナラン舞踊劇で、ランダ役や死体役になる人は、抵抗力(超能力とでもいうのかな?)が強く無い人でなければ、劇が終わった後に、目に見えない力に負けて、病気にかかったりするそうです。だから、呪術にかからない強さ(能力)があり、度胸もある人が役を受けるんだけれど、希望者が見つからない時は、人形を布で巻いてマヤットとして使うそうなんです。
それで人形を使わない場合が「アスリ」という言い方するんだって。
ほんと、知ったかぶりはイケマセンね、私・・・反省!
2008