バリ舞踊とダーク・エレクトロ・ポップの出会い

少し前の事、私、mayumi inouye ( m )が、ヤヤサン・ウィドヤ・グナで子供達に踊りを教えている時のことでした。（この財団については、こちらに詳細がありますので、ご覧ください。ガムランの楽器と、バリ舞踊の練習を、子供達が一生懸命に頑張っている風景を書いてあります。）

the Bubble

さて、その練習中のこと、ベルギー出身の歌手「Usi ES」
本名 Esther Weemaes （エスター・ウィーマース）さんという女性が現れました。
彼女は、子供達の踊りの練習を楽しそうに見学した後、私に次の様な話をふってきました。

最近、彼女自身が作詞作曲した歌を録音したのだが、ビデオ・クリップは、どうしてもバリ舞踊が使いたいと思っている。
ビデオでは、子供の踊り子を主人公にしたストーリーを考えていて、その踊り子をバリで探していた。
今日のこの練習を見ていて、自分のイメージするキャラクターにピッタリの子がいた。
是非、あの子に出演してもらいたいのだけれど・・・
と、私の生徒の一人「Putri（プトゥリ）」という子を指名しました。

プトゥリちゃんは少々恥ずかしがりの子なので、どうだろう？と心配したものの
本人は、やってみたい！と張り切っている様子。
ご両親に尋ねてから、という事で話がまとまりました。

また、私にもビデオの中の踊りの振り付けをお願いしたい。という事
主人公を助ける樹の妖精の役としてビデオに出てほしいという事も伝えられました。
生徒だけでなく、私も誘ってもらえるなんて、嬉しい事です。

早速、何度かのミーティングを重ねて、３ヶ月後に予定しているという撮影に向けて準備を進めました。
Usi ESが聴かせてくれた曲は、ダーク・エレクトロ・ポップという音楽ジャンルに属するそうで
私は初めて耳にするジャンルでしたが、好きなタイプの曲でした。
ただ、バリ舞踊を重ねるには、リズムなど難しく、曲を覚えるまで何度も何度も繰り返し聴く必要がありました。

the Bubble

舞踊が完成後、最初のプトゥリちゃんとの練習は、ヤヤサンでの練習開始前の１時間に、ヤヤサンの東屋を借りて行いました。
プトゥリちゃんに覚えてもらうのは、Usi ESの希望通りに、とても簡単な動きだけの舞踊です。
やはり、ガムラン音楽で踊ってきている彼女は、私よりも更にタイミングを掴むのが難しい様で、
初日は30秒の動きを何度も何度も繰り返しました。

「どこで踊りが始まるか判らない、全部同じに聞こえるの・・・」
プトゥリちゃんが言うのを聴いて、
その昔、私がバリ舞踊を習い始めた頃にガムラン音楽がどれも同じ曲に聞こえ
先生に全く同じ台詞を言ったのを思い出し、思わず苦笑してしまいました。

振り付け以外にも、Usi ESさんとは頻繁に会って、ディテールを相談しながら衣装や小物類などを考え、揃えました。
私ｍは、作品中で仮面をつけて踊ります。
樹をイメージするバリ舞踊の仮面を！という、その仮面のオーダーにはじまり
彼女のイメージするバリ舞踊「風」衣装の布を一緒に探したり、
撮影予定地の地元の方に許可をもらいに行ったり、あれこれやる事がたくさんありました。

撮影日も近くなり、Usi ESさんが強く希望している朝日が昇る前の暗い空の色の時間帯の確認のため
朝４時起床で現地へ下見に行った事もあります。が、毎回、雨・・・そう、雨季に撮影だったのです。
「朝日を背にして踊る」というイメージも、太陽がどちらから昇るのかが確認できず、当日持ち越しに。

the Bubble

カメラマンが、撮影延期を考えて、最後の下見に行ったのですが、やはり雨。
ただひとつ、いままで毎日毎日夜中から明け方に降っていた雨が、
徐々に朝から昼の雨に変わっている感じもあったので話し合いの上で
予定通り撮影を行う方向になりました。

そして、撮影日。
早朝撮影の為、３時集合でメイクというスケジュールだったので前日は早い時間に寝たのですが
夜、雨の音で目が覚め、「やっぱり雨か・・・」と思いながら二度寝したのですが
集合時間には、星空が！翌日の撮影も、また晴れ！
お供え物の効き目があったようです。
撮影中は晴れて、帰宅後に雨が降り始めるという運に恵まれ、滞りなく撮影は終了しました。

1ヶ月強の編集プロセスの後、ビデオが完成しました。

The film production teams

Usi ES

この曲ザ・バブル（The Bubble）は、Usi ESさんが作詞と作曲も行っている作品で
ビデオの中では、ひとりぼっちの少女（プトリ）が、仮面を友達代わりにして
自分だけの世界を作って遊んでいたら、仮面が樹の妖精（ m ）に変身して踊り始め・・・という物語。
最後は自分に自信をつけて、帰宅の途につく、思春期の少年少女の成長を表現しています。

Matur Suksma!

【news】 このビデオが3月19日付のベルギーの新聞「De Standaar」紙に掲載されました。